言葉や文化が違っても、感情を共有できる場所が劇場です。今まで日本、イギリス、エジプト、インド、ポーランドの劇場で、0歳からお年寄りまで様々な観客に出会い一緒に泣いたり笑ったりしてきました。今回はロシアの旧首都、サンクトペテルブルクのArtOkraina国際演劇祭で3人の俳優による「ハムレット」を上演しました。

ロシアは自然主義演劇(役の感情と思考の流れをていねいに分析して、それを俳優が舞台上で追体験する劇。’リアル’な劇)発祥の地です。以前モスクワの大学でひと月演技の勉強をしたときに、とても厳しい先生に「演じようとしないで役として本当にそこで生きていなさい。演じ始めたら殺す!」(なんと!)と教えられました。自然主義的な演技には向いていないとされるシェイクスピアの台本を演じる際にも、私はモスクワで学んだことがとても役に立っていると思います。舞台で本当に生きて、愛し、問題にぶつかり、右往左往している人間でありたいものです。

演劇祭最後の授賞式で最優秀女優賞に私の名前が呼ばれたときはびっくりしました。オフィーリア、女王ガートルード、道化の3役を美しく強く演じ分けたことに対しての賞だそうです。今まで一緒に頑張ってきた劇団仲間、ていねいに迎えてくれた演劇祭スタッフと観客に感謝です。これからも演技を通して、国や言葉が違ってもみんな同じ人間なんだよという単純なことを伝えていきたいと思います。

氷点下のサンクトペテルブルクは、川も運河もきらびやかな古い建物も凍てついて空気が澄んでいました。豪華なエルミタージュ美術館も満喫しました。いつか日本でも「ハムレット」を上演したいねと話し、劇団仲間はロンドンへ、私は東京へ帰ってきました。